サッカーで「パネンカ」という言葉は聞いたことがあるでしょうか? サッカーファンであれば、常識とも言える用語のひとつですが、サッカーを見ない人であればどのようなものかわからないでしょう。
PK(ペナルティーキック)の蹴り方の種類のひとつとして知られるパネンカですが、実際どのようなキックなのでしょうか。パネンカが生まれた経緯、その名手たち、そして過去の失敗例なども合わせて紹介していきます。
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パネンカとは?
パネンカとは、PKのキックの種類のひとつです。PKは通常相手キーパーのタイミングを外して逆側に蹴り込んだり、読まれていても止めることのできないコースに蹴り込むのが定石です。
しかし、その中でパネンカは異質。ゴール中央にチップキックの要領でふわりと決めるキックがパネンカと呼ばれます。多くの場合、キーパーはどちらかに飛び、ゴール中央には残らないため、パネンカを行う勇気さえあれば、決して成功率は低くありません。
「パネンカ」と呼ばれるようになった由来ですが、これは元サッカー選手の名前です。元チェコスロバキア代表アントニーン・パネンカが1976年のUEFA欧州選手権決勝という大舞台で成功させ、以降名前をとって「パネンカ」と呼ばれるようになりました。
なお、イタリアでは「スプーン」を意味する「クッキアイオ」と呼ばれることでもおなじみ。日本では特に明確な名称などがなかったため、「パネンカ」が名称として一般化されました。
パネンカの名手たち
パネンカ最大の難しさはやはり度胸です。PKのとき、キーパーは大抵どちらかに動くことになりますが、正面に蹴るというのは相当の勇気が必要です。しかもチップキックでふわりとした弾道を蹴るとなれば、なおさらのこと。しかし、このパネンカを幾度も成功させてきた名手は存在します。
それがレアル・マドリーのスペイン代表DFセルヒオ・ラモス。2019-20シーズンはPKキッカーとなり、シーズン中にパネンカを幾度も成功させました。通常シーズンに何度もやるものではないので、その成功率は異常と言えるでしょう。また、パネンカを読んできたキーパーに対しては普通に左右に沈めるなど、豪胆さだけではなく、その判断力も絶妙でした。
また、大舞台でやってのけてきた猛者もいます。それが元イタリア代表MFの2人。フランチェスコ・トッティはEURO2000、アンドレア・ピルロはEURO2012で成功させました。いずれもPK戦はイタリアの勝利に終わっており、2人が行ったパネンカは勝敗にも影響を与えています。
パネンカの蹴り方
パネンカの蹴り方は前述の通りですが、チップキックでボールの下あたりをすくい上げるのがコツです。また、なるべくボールを浮かすのもポイント。低い放物線となると、キーパーの残した足や手に弾かれる可能性があるため、浮かしたほうがベターです。とは言え、それでゴールマウスを捉えることができなければ、元も子もないのでバランスも重要となるでしょう。
また、助走の際もパネンカを匂わせないことが大事です。ゆっくりと入っていったほうがパネンカは蹴りやすくなりますが、悟られる可能性もあるため通常通りスピードを持ってボールにアプローチすることが重要となります。
蹴り方こそそこまで難しいものではありますが、いざやるとなると試されるのはやはり胆力。試合中に与えられたPKならともかく、PK戦においては1つの失敗が勝負を分けるため、より勇気が試されることになります。
そのため、パネンカを蹴ることに蹴り方以上に、一番必要なのは勇気と言えるでしょう。
過去には失敗例も…
基本的に決断してしまえば、成功の確率は高いパネンカですが、過去には失敗例もあります。近年では、フランク・リベリがバイエルン・ミュンヘン時代に実行。2009年1月に行われたシュトゥットガルト戦で試みたものの、一歩も動かなかった元ドイツ代表GKイェンス・レーマンに阻まれました。
また、2020-21シーズンにはマンチェスター・シティFWセルヒオ・アグエロが、優勝が決まる可能性のあるチェルシー戦で実行して失敗。最終的に1-2と逆転負けを喫し、アグエロは「誤った決断だった」と謝意を示しました。
失敗した場合はこのように悪目立ちしてしまうというのもポイントで、それがパネンカを蹴るのをはばかられる理由のひとつでも言えるでしょう。
まとめ
今回はPKのキックの種類のひとつである、パネンカについて紹介してきました。現役時代、PKキッカーでもあった筆者ですが、パネンカは実行しようとも思ったことがありません。これまでもこれからも実行することはないでしょう…(笑)。